成人の身体は約60%が水分でできており、わずか1〜2%減るだけでも集中力の低下や代謝の乱れなど、さまざまな不調が現れる可能性があります。
特に冬は、汗をかく機会が少ないため水分補給を忘れがちですが、呼吸や皮膚から1日あたり約900mlもの水分が失われているといわれており、気づかないうちに体が水分不足になっているケースも少なくありません。
体の水分バランスを保つには、1日あたり約2.5リットルの水分補給が目安とされていますが、実際にはなかなか難しいものです。
そこで本記事では、冬に必要な1日の水分摂取量の目安や、効果的な補給タイミングについてわかりやすく解説します。ぜひ日常の水分習慣を見直す参考にしてください。
冬の水分補給、こんなサインは要注意
冬場に水分不足が起きると、以下のような症状が出やすくなります。
- 唇の乾燥や皮むけ
- 喉のイガイガやつっぱり感
- 肌のかさつき・つっぱり
- 便秘や尿の色が濃くなる
これらはわかりやすい症状ですが、実は水分不足によって起こる不調には、一見関係がなさそうな症状が隠れていることがあります。
頭痛・眠気・集中力の低下
水分が不足すると、血液が濃くなり、流れが悪くなります。
血液は酸素や栄養を運ぶ通り道ですから、その循環が滞ると、脳に十分な酸素が届きにくくなります。脳は全身の中でも特に水分を必要とする器官で、わずかな変化にも敏感です。
そのため、水分が少し足りないだけでも、頭痛・眠気・集中力の低下といった不調が現れやすくなるのです。
2012年、アメリカ・コネチカット大学のローレンス・アームストロング博士が科学誌『The Journal of Nutrition』に発表した研究では、体内の水分量がわずか1.5%減少しただけでも、集中力・学習能力・反応速度などの認知機能が低下することが示されました。
通常、人は体内の水分が1〜2%減少した段階で「喉の渇き」を感じるとされています。つまり、その喉が渇いたと感じる手前のわずかな水分減少でも、すでに脳のパフォーマンスは落ち始めているということです。
さらに水分量が減ると、体は水を節約しようとして血管を収縮させます。その結果、頭部の血流が一時的に圧迫され、締めつけられるような頭痛が起こることもあります。
午後に頭がぼうっとしたり、集中が途切れやすくなったりする日は、単なる疲労ではなく、水分不足の可能性もあります。喉が渇く前に一口だけ飲むことが、冬のだるさや頭痛を防ぐ第一歩になります。
立ちくらみ・めまい
朝起きたときや入浴後にふらつくことが増えたと感じるなら、それは水分不足のサインかもしれません。
冬は発汗量が少ないため、喉の渇きを感じにくく、気づかないうちに体内の水分量が減っています。水分不足により血液が濃くなると、脳への酸素供給が減少します。このとき、立ち上がった瞬間にふらっとしたり、視界が暗くなるような感覚が生じます。
また、体内の水分が減ると、体温や血圧を調整する自律神経の働きも乱れやすくなります。
寒暖差が激しい冬場は血管が頻繁に収縮・拡張を繰り返すため、水分不足による自律神経の不調が起こりやすいのです。
さらに、水分が不足すると老廃物の排出が滞り、疲労物質が体内に蓄積します。
こうした疲労もまた、めまいやだるさを強める一因となります。朝起きてすぐやお風呂上がりにふらつく方は、血圧だけでなく体の水分にも目を向けることが大切です。睡眠中にもコップ1杯分ほどの水分が失われるため、起床後の白湯1杯が予防に効果的です。
寒い季節でも喉が渇いたと感じる前のひと口を心がけることが、めまいを防ぎ、体のリズムを穏やかに保つための習慣になります。
ふくらはぎのつり(こむら返り)
こむら返りとは、筋肉が突然、意図せず収縮して激しい痛みを伴う現象です。
疲労による単なる筋肉痛とは異なり、特にふくらはぎに起こることが多く、睡眠中や朝方に突然発症することがあります。
この現象には、筋肉の伸びすぎを防ぐセンサー「筋紡錘(きんぼうすい)」の働きが深く関係しています。筋紡錘は、筋肉が急に引き伸ばされたときに過剰な伸展を防ぐため、筋肉に収縮を指令する仕組みです。
しかし、脱水や血流不良、筋肉疲労などの状態があると、この指令が過剰に働き、筋肉が必要以上に強く収縮してしまいます。これが、夜中や朝方に突然こむら返りが起こる原因のひとつです。
水分や電解質のバランスが崩れることも大きな要因です。
体内のナトリウム・カリウム・マグネシウムが不足すると、筋肉の収縮と弛緩のリズムが乱れ、筋肉が誤作動を起こしやすくなります。さらに冬は冷えによって血流が滞り、筋肉に酸素や栄養が届きにくくなるため、脱水と相まって痙攣が起こりやすくなるのです。
こむら返りは、水分とミネラルの不足を知らせるサインです。寒い季節でも意識的に水分を補給し、日常の中で少しずつ体を温めながら潤すことが、筋肉を守る一番の予防になります。
1日どのくらい必要?冬の水分補給の基準
寒い季節は汗をかく機会が減ることから、水分摂取を軽視してしまう傾向があります。
しかし、呼吸や皮膚からの蒸発によって、冬でも1日に約900ml前後の水分が失われているといわれています。体の60%を占める水分は、血液やリンパ液、体温の調整、老廃物の排出など、生命活動のすべてに関わっています。
そのため、冬こそ意識的に水分を補給することが大切です。
ここでは、1日にどのくらいの水分を摂ればよいのか、そしてどのように取り入れるのが理想的かを解説します。
飲み物からの摂取は約1.2L/日が目安
成人の場合、体内の水分を保つために必要な量はおおよそ1日2.5リットルといわれています。
しかし、全てを飲み水で補給する必要はなく、食事や体内代謝で補えるのが約1.3リットル、残りの1.2リットル前後を飲み物で補うことが理想的です。
これは、1回200ml程度の水を6回に分けて飲むイメージですが、冬は喉の渇きを感じにくいため、コップ1杯をまとめて飲むよりも、少量を何度かに分けて摂るほうが体に吸収されやすくなります。
食事・代謝水で約1.3Lを補う
水分は飲み物だけでなく、食事からも自然に取り入れられます。
ご飯や味噌汁、野菜や果物などには多くの水分が含まれており、これらを合わせると1日に約1リットル前後を摂っている計算になります。
また、体の中では食べた栄養を分解する際に「代謝水」と呼ばれる水分が生成されます。たとえば、脂質1gからは約1.07gの水分が生まれるとされており、これが1日で約300ml程度の補給源になります。
つまり、飲み物・食事・代謝の3つを合わせることで、体の水分バランスが保たれているのです。
ただし、食事内容が偏っていたり、外食が多い場合は、塩分の摂りすぎで体が水分をため込みやすくなり、逆にむくみによる脱水を起こすこともあります。水分を控えるのではなく、食事の質と一緒に水分のとり方を見直すことが大切です。
負荷の高い日は、喉が渇く前に一杯上乗せ
日によって活動量や環境が異なるため、水分の必要量も変化します。軽い運動や外出、暖房の効いたオフィスでの長時間の作業など、体を動かす機会が多い日は、通常よりも多くの水分が失われます。
例えば、軽い運動を1時間行うと約200mlの水分が失われるといわれています。さらに、屋外でのスポーツや長時間の移動などでは、その量が数倍に増えることもあります。
ゴルフの場合、1ラウンド(約4〜5時間)で平均約1,000ml前後(約1kg)の体重減少が見られると報告されています。
このような日は、いつもよりコップ1〜2杯分(200〜400ml)を目安に上乗せして補給すると、体のバランスを保ちやすくなります。喉が渇いたと感じたときには、すでに軽度の脱水が始まっている状態です。
特に冬場は体が冷えて水分をとる意欲が下がるため、「喉が渇く前のひと口」を意識的に取り入れることが、疲れにくく快適な1日を過ごす秘訣です。
尿の色が濃い・回数が少ないは不足のサイン
自分の体がどれくらい水分を必要としているかを知るには、尿の色と回数が一つの目安になります。冬は汗をかきにくいため、体の乾きに気づきにくい時期ですが、尿の状態を観察することで脱水のサインを早めにキャッチできます。
・薄い黄色〜ほぼ透明
体内の水分が十分に足りている状態です。水分摂取量が適切で、体の巡りも良好に保たれています。この色であれば特に心配はありません。
・薄い黄色
健康的な範囲内で、わずかに水分が減り始めている状態です。特に問題はありませんが、コップ1杯程度飲み足すと、より理想的なバランスを保てます。
・濃い黄色
体の水分がやや不足し始めています。1時間以内に約250mlの水分をとりましょう。特に運動後や入浴後、暖房の効いた室内に長時間いたあとなどは、意識して水分をとりましょう。
・オレンジ色
脱水状態が進行している可能性があります。頭痛やだるさ、立ちくらみなどの症状を伴うこともあり、早めの水分補給が必要です。水を飲んでも改善しない場合は、体調不良や疾患が隠れていることもあるため、医療機関に相談するようにしましょう。
尿の色は体からの大切なメッセージです。喉の渇きだけでなく、色で見る体調チェックを習慣にすることで、冬の隠れ脱水を防ぐことができます。
冬の水分補給を無理なく続ける配分プラン
水分補給は量だけでなくタイミングが大切です。体が最も水を必要としている時間帯に、少しずつこまめに飲むことで、吸収効率が上がり、体の負担も軽くなります。
ここでは1日の流れに沿って、無理なく続けられる冬の水分補給のタイミングを紹介します。
起床後は一杯の白湯でスタート
朝起きた直後は、体が乾いている時間帯です。睡眠中に呼吸や発汗で約500mlの水分が失われています。
起床したら、まずコップ1杯(150〜200ml)の白湯をゆっくり飲みましょう。内臓を温めながら血流を促し、体のスイッチが自然に入ります。冷たい水よりも温かい白湯の方が胃腸への刺激が少なく、吸収も穏やかです。
午前はデスク常備でこまめに積み上げる
午前中は体温が上昇し、代謝が活発になる時間帯です。デスクワーク中も加湿器や暖房によって知らぬ間に水分が奪われています。
手元にマグカップやボトルを置き、1時間ごとに一口ずつ飲む習慣をつけましょう。午前中で300〜400mlほどが理想です。コーヒーや緑茶を飲む場合は、利尿作用があるため、水や麦茶を一緒に取り入れるとバランスが保てます。
ランチは、食事の水分に加えて「もう1杯」
食事からも自然に水分が摂れますが、食後に常温の水やお茶をコップ1杯追加することで、消化が促され、午後の集中力も保ちやすくなります。
冷たい飲み物では胃腸が冷えて消化が遅くなるため、常温か白湯がおすすめです。外食時でも、温かいお茶やスープを選ぶとよいでしょう。
15時と17時に「コップ1杯」を補給
午後は集中力が下がりやすく、作業効率も落ちやすい時間帯です。15時と17時ごろを目安に、それぞれコップ1杯(150〜200ml)ずつ水を飲む習慣をつけましょう。
この2回の補給は、脳のリフレッシュにも効果的です。軽いストレッチや深呼吸と合わせて行うと、血流が促進され、体のめぐりが整います。
入浴の前後に白湯で水分補給
入浴は発汗によって200〜400mlほどの水分が失われるといわれています。入浴前にコップ半分(100mlほど)、入浴後にもう半分を飲むだけでも、のぼせや脱水を防ぐ効果があります。
お風呂上がりは冷たい飲み物を一気に飲みたくなりますが、胃腸への負担を避けるため、常温または白湯でゆっくり補うのが理想です。
就寝前は少量でのど潤し、夜間は控えめに調整
就寝前の水分は、飲みすぎると夜間のトイレが増えて睡眠の質を下げる原因になります。目安はコップ4分の1(50〜100ml)程度です。
軽く口を潤す程度で十分です。喉や鼻の乾燥を防ぎ、就寝中の脱水リスクを和らげます。夜中に起きた際にも、一口だけ水を飲む程度で構いません。
冬の水分補給でよくある質問
冬は喉の渇きを感じにくい季節ですが、気づかないうちに体が乾いていることも少なくありません。ここでは、多くの人が抱きやすい3つの疑問にお答えします。
- コーヒーやお茶だけ水分補給してもいい?
- スープや味噌汁は水分に入る?
- 経口補水液は水分補給に効果的?
それぞれ詳しく解説していきます。
コーヒーやお茶だけ水分補給してもいい?
コーヒーやお茶も、日常の水分補給として十分に役立ちます。
カフェインには利尿作用があることが知られていますが、長期的に摂取しても水分バランスに悪影響を及ぼす可能性は低いと考えられています。これは、カフェインを含む飲み物を飲む際には、同時に水分も摂取しているためです。
東京福祉大学の研究でも、日常的にコーヒーやお茶を飲む習慣がある人では、カフェインの利尿作用による水分損失がごくわずかであることが示されています。
つまり、コーヒーやお茶も適量であれば脱水を心配する必要はありません。ただし、何杯も飲む場合は、同じ量の水や麦茶を併用して体内のバランスを保つとより理想的です。
スープや味噌汁は水分に入る?
スープや味噌汁も水分補給として有効です。
具材に含まれる水分や、調理の際に加えたお湯がそのまま吸収されるため、1杯(約200ml)の味噌汁を飲めば、同量の水を飲んだのとほぼ同じ水分補給効果があります。
ただし、塩分の多い汁物を過剰にとると、体が塩分濃度を下げようとして水分をため込み、むくみやすくなることもあります。出汁や野菜のうまみを活用して、薄味を心がけましょう。
体を温めながら水分をとれる点で、冬の食事には理想的です。野菜スープや具沢山の味噌汁は、食物繊維とカリウムも補えるため、体内の水分バランスを整えるのに役立ちます。
経口補水液は水分補給に効果的?
経口補水液は、脱水症のための食事療法として世界保健機関(WHO)が提唱する「経口補水療法(ORS)」に用いられる飲み物です。日本では「特別用途食品(病者用食品)」として国の制度に基づいて認可されており、専用のマークがついています。
その成分は、水・電解質(ナトリウム、カリウムなど)・ブドウ糖を一定の割合で含むもので、体内から失われた水分と塩分を効率よく吸収できるようにつくられています。
このため、感染性胃腸炎や下痢・嘔吐、発熱などで脱水が進んでいるときに有効です。
一方で、普段の水分補給として常用するものではありません。
経口補水液はスポーツドリンクよりもナトリウムやカリウムの濃度が高く、脱水状態でない人が飲みすぎると、塩分過多や電解質バランスの乱れを起こすおそれがあります。
また、糖質も含まれているため、糖質制限をしている方や、医師からナトリウム・カリウムの摂取制限を指示されている方は、使用前に医師へ相談することが大切です。
経口補水液はあくまで「体調不良時の回復を助ける医療補助的な飲料」です。 健康な日常生活の中では、水や白湯、麦茶などで十分に水分を補うことができます。
温水×冷水のオーケンウォーターで、冬でも無理なく水分補給
冬の水分補給を続けるために大切なのは、「気がついたときにすぐ飲める環境」を整えることです。寒い時期に冷たい水を無理に飲もうとしても長続きしません。
そんなとき、温かい白湯や常温水を手軽に準備できるウォーターサーバーがあると、自然と水を口にする回数が増えます。
オーケンウォーターのサーバーは、温水と冷水をワンタッチで切り替えられる仕様です。
朝は白湯で体を温め、入浴後には冷たい水でリフレッシュするなど、体調や時間帯に合わせて使い分けができます。
白湯は内臓を温めて代謝を促し、冷水は気分をすっきりさせてくれるため、どちらも冬の健康維持に役立ちます。
また、多くの機種にはECOモードがあり、節電しながら使えるのも魅力です。設定中は温水・冷水ともに常温に近づき、お湯の温度は通常の80〜90℃から70〜80℃ほどになります。
白湯や温かい飲み物を作るときは、温度がやや低めになる点だけ意識しておくと良いでしょう。
そして何より、飲みたいと思ったときに、すぐにちょうどいい温度の水を飲めるのがウォーターサーバーの大きな魅力です。
朝の白湯も、昼の常温水も、夜の一口も、ボタンひとつで理想の温度になるため、忙しい毎日の中でも、水分補給が自然と続けられます。
















